整体というと、腰痛や50肩、あるいはスポーツ障害等を思い浮かべる方が多いと思う。実際大半は身体の痛みの問題だ。しかしながら、心の痛みの相談も少なくない。
以前ある病院のリハビリのお手伝いをしていたことがある。そこはありとあらゆる病いに苦しむ人々と、医師、看護師、その他のスタッフとの戦場ともおもえるほどハードだった。特に心のケアを必要とする方々に対し、時には深夜に及ぶこともあった。
わたしは専門的なカウンセラーの勉強をしたことがないので、できるだけお断りしている。とはいえどうしても、という依頼を最近うけ、かつての経験が役立つかともおもい、何回か向き合うことになった。
免許を返上してしまったその方は、仮にSさんとしますが、電車とバスを乗り継ぎ、私のもとに通ってきた。両親ともに医師という家庭に育ったsさんは、かなりの医学知識をもち、私はたじたじだった。
二度の結婚に失敗し、優秀な親兄弟にコンプレックスを抱きつづけ、株でも大失敗し、生きる希望をうしなっているようだった。何時間もしゃべりつづけ、疲れるとさっと帰っていった。
そんなことをくりかえしているうちに、やっと明るさがもどってきた。その間私はほとんどしゃべっていない。ただ聞いているだけだった。「いろいろお世話になりました」といわれても、なにもしていない私はただただ困惑するだけだった。
一日もはやく立ち直ってもらうように、ただただ祈る日々です。